That エッセイ once again

                              


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                当教室に在籍して早18年。
                  アンサンブルにも参加して元気にギター弾いている。
                   マダムにギターを始めたころの思い出を、
                    以前語っていただきました。
                      今回再び掲載したいと思います
                         大陸育ちのお話は興味が尽きない。
                          もう一度詳しくお話していただき、
                            加筆しながら紹介したいと思います。
                              かなり貴重なお話であり、
                              歴史の証言の意味合いもあります。


      
=満州から東京へ(十三)=
 
 
とにかく会社の中途採用の試験には受かりました。

しかし、やはりそろばんができないので、

当面何をするか決まりませんでした。

私以外にそろばんができない人がもう一人いましたよ。

やはり中途採用の人なんですね。

「どうするんだろうね」なんてことを言っていたのですが、

上司の一人が計算機を入れようという主張がありました。

これはもう上の役員の人たちは大反対です。

「そんなものは必要ない」という一点張りです。

大反対にあってましたね。

それでもその人は後に引きません。

どうしてもと言い張るので、

ついに役員の人たちも折れてとりあえず試験的に、

二台をIBMからレンタルすることになりました。

まさになにが幸いするかわからないですね。

そろばんのできない私ともう一人の方が、

新規に導入された計算機の係になりました。

IBMから派遣されてくる技術者に指導を受けるわけです。

しかし、なんとも困ったことに、

計算機がガチャガチャ計算してる間に、

そろばんのほうが早く答えを出してしまうのです。

とにかく計算機が答えを出す前に、

そろばんの答えは結構前に進んでしまうのです。

「あら・・・」って感じですよね。

上の役員の人たちはなんだか鼻でせせら笑ってましたね。

「どうするんだ、まったく・・・」ってな顔をして見てましたよ。

それでも導入をあくまで主張した上司は、

「必ずこの時代が来る」と、信じていましたね。

結局、この人の言ったとおりそろばんの出番は徐々に減っていき、

機械が勝っていきました。

そこから毎年新入社員の女の子が増えてきて、

なんと最初からここに携わっていた私が、

それから入ってくる子たちの指導係になりましたよ。

それから10年もこの部署に携わることになったのですが、

なかなか会社が辞めさせてくれないんですね。

結婚するからと言ってもなかなか辞めさせてくれないんです。

この時代、旦那さんがいて主婦が働くなんていうのは、

男の沽券にかかわるとかいうことで、

主人になる方も嫌な顔をするんですよ。

会社のほうは引き止めるしほんとに困りました。

こちらも歳も歳なのでなんとか会社を説得して、

会社も渋々納得してくれました。

その後、このころの部下の子たちに会うと、

会うたびに私は怖かったと言います。

後輩の男の子達にも怖かったと言われましたよ。

まあ、そうなのかなとは思いますが、

負けず嫌いの性格だったので、

言葉がきつかったのかなとは思います。

そのころの部下の子たちもほとんどは鬼籍に入ってしまってます。

寂しい限りですね・・・。
=つづく=



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