△△二子山登山始末記△△
=第十一回=
110番通報はできたようだった。
このままの状態でみなを待たせておくかどうか、
リーダーは迷ってるようだった。
二重遭難という言葉がリーダーがボソッと言ったのが聞こえた。
もう一度リーダーは落ちたところまで行くという。
このまま救助隊が来るまで放ってもおけない。
しかし、今のままの状態で降りて行ってもどうにもならない、
リーダーに「もう降りていくのも繰り返してるので、
少し待ってもいいんじゃないですか」
「体力を消耗するとこの後に響きますよ」と言うと。
「それもそうだが、胸がかなり痛むようで、
なぜ自分がここにいるのかが理解できないでいる」
「上から落ちたんだと言ってもなんだか理解できてないようだ」
そこまで聞いて少しギョッとした。
要するにお自分の置かれた状態がはっきりわかってないということだ。
あまりのことに若干頭が錯乱したのだろう。
「ただ手足は動かせるので、
とにかく枝を離さないように強く言ってある」ということだ。
とりあえず足の下の安定した場所に立たせて、
あとは枝から手を離さないでくれと祈るばかりだという。
ことが想像以上に切迫した状態だと改めて認識した。
他のメンバーをどうするか、
この場所にこのまま立たせておくこともできないということになり、
とにかく安全な頂上へ戻ろうということになった。
再び緊張感が走った。
リーダーをとりあえずその場に残して自分が先頭になって、
頂上への道を登り返した。
緊張のためか誰も声を発することもなく、
頂上まで乱れることなく上り返した。
遭難の時刻、落下距離など徹底していると、
頭上でヘリの音がしてきた。
頭上を旋回し始めた。
今の状態だとヘリの出番はなさそうだ。
ヘリに要救助の必要なしの意思表示をしたのだろう、
何回か旋回したのちヘリは遠ざかっていった。
救助隊も来る頃かなと皆を連れてまた元の場所まで下りて行った。
山岳救助隊が到着していた。
落ちた人を登山道まで引き上げていて、
リーダーがサポートしながらゆっくりゆっくり下り始めた。
落ちた方の足元も若干心もとないが、
サポートするリーダーもかなり疲労困憊という感じだった。
しばらく下っていくと、
山岳救助隊の登ってくる人たちと出会った。=つづく=
top