エッセイ





                 
〜〜〜私の中の「メルツの愛の歌」演奏記〜〜〜

 




 J・G・メルツ作曲の「愛の歌」を、どのくらいの方がご存知だろうか・・・・。

D・ラッセルが来日コンサートで演奏曲目に加えたりCDを出したりで、

一時メルツの曲が演奏された時期もありましたが、

最近コンサートのプログラムに載ることも少なくなってきました。

ギターの技法として重要かつ最も美しいアルペジオ奏法で弾かれる後半の部分は、

最も美しいギターのメロディーのひとつだと思います。

 前半のシンプルではありますが、

語りかけるようなメロディーはギター的で印象深いものです。

この曲はもっと弾かれてもいい曲だと思っています。

 特別な超絶技巧が盛り込まれてるわけでもなく、

地味といえばそれまでですが、

ギターのレパートリーとしては、

「禁じられた遊びのテーマ」と同じくらい重要だと思っています。

わたしはこの曲が大好きです。


 さて、私は去年の教室のクリスマス会から今年の春のかけて、

このメルツの「愛の歌」を演奏する機会が3回ほどありました。


 実は、何年か前にもこの曲を演奏した事があったのですが、

初めてでもあり自分のレベルでは思った以上に難しく、

その時は、音符を追っただけで演奏と言えるほどの演奏ができなかった思います。


 自分の納得いく演奏ではなかったこともあり、

なんとなく煮え切らない思いが残っていました。

 結果、この曲のメロディの美しさがどうしても忘れられなく、

いつかリベンジを…という思いがずっと続きました。



 音楽を演奏するという事は、

作曲家の意図を伝えるとか、作曲家がその曲を作った時の状況を表現する等、

いろいろな表現方法がありますが、

一番大切なのは弾き手がどう演奏するのか、

弾き手が感じた曲のイメージをどう表現するのかが最も重要な事なのだと思います。


 私はこのメルツの「愛の歌」を初めて弾いた時、

ただ「綺麗な曲」というだけで、具体的なイメージという物がありませんでした。

まあ、まだいろいろ考えて演奏するというほどの力量もなかったのかもしれませんが・・・・。

 
 ただこの綺麗な曲を、綺麗に弾く事ぐらいまでしか考えが及びませんでした。

だから結果、ただ音符を追うだけの演奏にしかならなかったのです。


この曲を演奏するには、何が足りなくて、何が必要なのか、

どうもこの時は、残念ながら自分の中では分かりませんでした。

レッスンでもテンポの取り方を徹底的に言われたくらいで、

どのように表現するというところまではいきませんでした。

言われたところで内容がもうひとつ理解しきれていない自分には、

弾ききれなかったでしょう・・・・。

 「いい曲だな!」と思う、自分の気持ちとはかけ離れたところで演奏したわけです。

何とかこの曲の持っている中身をもっと深く掘り下げて、

もう一度演奏してみたい!

こういう思いは徐々に強くなっていきました。

2度目の演奏をする機会が訪れて、

気持ちも新たに挑戦しました。

一回目の時のように弾くだけで精一杯ということもありませんでしたが、

「愛の歌」の歌の部分が歌いきれませんでした。

曲に対する愛は、十分あったのですが・・・・。






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