ローラン・ディアンス
ギターリサイタル
=晩秋鑑賞記(一)=
一気に秋が深まったというよりも、
一気に冬が押し寄せたというようなこの頃・・・。
ローラン・ディアンズのコンサートに出かけた。
いつもの年であれば、
今の時期もう少し気温に容赦というものがあるはずが、
なんとも余裕を失ったような寒さの中、
コンサート会場である「白寿ホール」に向かった。
「白寿ホール」自体まだ行ったことのないホールなので、
少し早いかなという時間に出発。
地下鉄も使えてアクセスは悪くない・・・。
駅を降りて「どこかなぁ・・・」と回りを見渡す。
グーグル地図でなんとなく方向を見ておいたので、
若干当てにならない記憶の方向へ歩いてみた。
すると遠目に白寿の文字が見えてきた。
とりあえずホール入り口付近までいって、
中を見ているとさすがにまだ誰もいない。
回転ドアの中にはクリスマスツリーが飾ってある。
結構、赤で覆われた感じで横にも広げた感じ。
どういう形だったかは覚えていない・・・。
ここでただ立って待っているのもつらいということで、
コーヒーでも一杯飲んで再び来ようと思いまた回りを見渡すが、
道路沿いはビルばかりでお店らしきものもない。
少し戻って、代々木八幡に向かう道に沿ってお店がありそうなので、
その道を代々木八幡に向かって歩き始めた。
時間が早めのせいか人通りもまだ少ない。
並んでる店も間口はそれほど広い店はなく、
軒の低い店が並んでる感じ・・・。
若干、殺風景な印象を受ける街並みだ。
わが地元にもあるハンバーグの店が目に留まって、
なんとなく勝手知ったるという思いでドアを開けて入ると、
壁に沿って細長くカウンターが奥まで続いている。
反対側は調理の部屋で店員さんが忙しそうだ。
両側を挟まれたウナギの寝床のような狭い通路を通って、
奥に見えるテーブルに向かって歩いた。
カウンタ−には三人くらいが壁に向かって座っていた。
店内全体は、いわゆる蛍光灯の明かりということではなく、
赤っぽい光なので少し薄暗い印象だ。
奥には二つほどのテーブル席があつらえてある。
とにかくボコッと時間が空いてしまった時の用意というのをしてこなかった。
時間をつぶすべき何も持っていない。
片肘ついてコーヒーを持ち天井を見つめる・・・。
もちろん天井にもなんにもない・・・。
狭いのであまり見上げていれば首が痛くなるだけだ・・・。
おもむろに内ポケットに手を入れて、
コンサートのチケットを忘れてないか確認。
ポケットに入れたと思ってもいざとなると結構不安になるのだ。
ほんとに吹けば飛ぶような薄い薄い紙のチケットを手に取って眺める。
チケットの金額を見て、
チケットの紙の薄さとの落差を感じさせる金額が書いてある。
チケットだけを眺めて済むような短い時間が残されてるわけでもない。
次にコンサートのチラシを広げて眺める。
これまたディアンスの顔とコンサートの日程が書いてあるだけのシンプルさ・・・。
演奏される曲目が全く書いていない・・・。
曲目が書いてあればあれこれ過去に聴いた演奏などを思い出して、
曲のイメージを広げて楽しい気分になるのだが、
ディアンスの顔だけだと特に何も浮かばない・・・。
ちょっと強面の顔かな・・・くらいしか浮かばない。
曲目は、コンサートの中で本人が曲目を紹介していくということを聞いている。
どんな曲が弾かれるのか皆目見当がつかない。
作曲家でもあるディアンスであれば自作品がどのくらい弾かれるのか。
ギターの演奏家ということであれば弾かれる曲というのは、
だいたい聴いたことのある曲が並ぶことも多いが、
本人が作曲家ということになれば自作品が入ってくるわけだから、
どこまで既成の曲が入ってくるのか見当もつかない・・・。
チケット、チラシ、天井を順番に見ているうちに、
冷めてしまったコーヒーもカップの底に澱のように残って、
いい時間になってきた。
さてと行くかなと腰上げてカウンター席を見ると、
来た時は三人だったのがほぼ満席になっている。
18:00も過ぎてくると仕事帰りの人も多く来るのだろう、
それにしてもカウンター席にズラッといっぱいに並んだのには驚いた・・・。
やはりこういうお店にも稼ぎ時という時間帯があるということだ。
狭いウナギの寝床状態の通路を、
人の背中にぶつからないようにドアに向かって歩く。
ドアを開けて外に出ると、
入る時は若干の明るさがあったが真っ暗になっていた。
出た時に左右曲がる道を間違えたりすることもあるが、
さすがに変なところに労力を使いたくないということで、
慎重に方向を確かめた。
寒さも一段と増した感じで早足に会場に向かって歩き出した。
開場時間より少し早目についたが、
外で待つ気にはならず若干の躊躇の後、回転ドアを押して中に入る。
すでにかなりの人がホール階に行くエレベーターの前にたむろしていた。
その人ごみに入っていく気にもならず、
赤くデコレーションされたクリスマスツリーの横に、
これからの「白寿ホール」でのコンサートのチラシが入っているスタンドが置いてある。
かなりの数のコンサートが予定されているようだ。
ギターのコンサートのチラシも二〜三置かれていた。
いくつかチラシを眺めているうちに係りの女性が動き始めた。
ホール階へ我々を運ぶエレベーターも動き始めたようだ。
エレベーターのドアが開いて乗り込む・・・。
エレベーターのドアが閉まって動き出すと、
あっという間に到着・・・。
何も考える暇もなくエレベーターのドアが開き、
目の前に広がったホールロビーの中を歩き始める。
なにしろ一番に来た関係でまだそれほど人は多くはなかった。
このロビーには特に何の装飾もなく、
ちょっと無愛想かなという感じもあったが、
それほどいやな雰囲気でもない。
まず席を確認しようとホールの中に入る。
ホールの中もシンプルで、
ステージと客席があるという表現で終わりの感じ・・・。
ただ照明の関係なのか柔らかな空気感を感じだ。
シンプルではあるがゴツゴツした感じはないということだ。
前から4列目の席を確認して着てきたコートを置く。
お決まりのトイレに向かって早足で歩きだす。
ホールを出るとすでにロビーは人で埋まっていた。
少しの間に人が集まってきた感じ・・・。
トイレも少し狭いが綺麗でいい雰囲気で快適だ。
ホールの中に戻って席まで戻ろうとするのだが、
このホールの客席には真ん中に通路がない。
両サイドの壁際にしか通路がないので、
真中の席まで行くには結構大変だ。
すでに座っている人に頭を下げっぱなしで狭いスペースを席まで歩く。
やっとたどり着くという感じがあってけっこう神経を使う。
この感じだと、とにかく前半が終わるまではもうトイレには行けない。
冷えてる夜なので若干気にはなるところではあった・・・。
席に戻って入場の時にもらったプログラムを開いたが、
これにも曲名は書いてなくディアンスの挨拶文と紹介のみ。
これはもう本人が登場するまで曲目はまったくわからない。
ディアンスはフランスの方ということなので、
フランス語で曲名を言うのだろうか・・・。
場合によっては曲名もよく分からないということもありえるわけだ。
コンサートが終わって曲目がなんだったか語れないという事態も想定できる。
どうすっかな・・・というちょっと困惑気味の気分を抱きつつ、
ライトに照らされ明るいステージを眺めながら、
なんとなく大丈夫かなという思いが湧いてきつつ、
開演時間は刻々と迫ってきた・・・。 >つづく<
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