My life in guitar music



                
                   
長井 浩氏





  

    【第8章 ギタリスト列伝〜〜】



 
 前章では、かなりマイナーなリュートの世界について熱く語ってしまったが、

今回からはオーソドックスなギタリストの話に移る。

原則として生で聞いた演奏家の思い出を中心に展開していきたい。





【ジュリアン・ブリーム−1】




 ブリーム先生のことは何度か本稿で述べてきたが、

あらためてそのコンサートの思い出を書かせていただきたい。


 ギターを始めて間もない頃、

クラシックギターのLPレコードを購入すべく、

大阪府堺市中百舌鳥のダイエーの中のレコード屋に自転車で乗りつけた。

高校1年生のときのことである。

今となっては全く意味不明の行動なのであるが、

そのときに買ったのがRCAから出ていた、

ブリーム先生のギターのレコードで、

タイトルは「コパカバーナ協奏曲」であった。

そんな曲知らんで、との突っ込みが入りそうであるが、

これはヴィラ・ロボスのギター協奏曲のことである。

今では死語だが当時はそう呼ばれていた、

(かどうかは知らないが、

少なくともそのレコード上ではそう呼ばれていた。)


 イエペスやセゴビアの小品集ならともかく、

ブリームのヴィラ・ロボスである。

初心者にしてはチョー渋すぎのセレクションと言えよう。

クラシックのレコードは家にたくさんあり、

ドヴォルザークとかベートーヴェンのシンフォニーなどを、

勝手に聴いたりしていたため、

オーケストラの音楽を聴くことにはさほど抵抗はなかったので、

ジャケットのイラストに釣られて手を出したようであるが、

なぜか一回目からえらく気に入ってしまったのである。

その後色々な人の演奏でこの曲を聴いたが、

この盤に優る演奏はなかった。

ブリーム先生は、アランフェスはあまりお得意ではなさそうであるが、

この協奏曲はまさに究極、至高、絶品である。

コパカバーナ協奏曲の後は、

同じくヴィラ・ロボスのプレリュードが5曲入っており、

これはまあご承知のとおり非常に訴求力の強い曲なので、これも気に入った。

そういう浅からぬ因縁から、

1979年に久しぶりに来日したブリーム先生のコンサートは、

当然のように万障お繰り合わせの上お出かけください状態であった。


 プログラムを紛失しているので何を弾いたかよく覚えていないが、

前半はリュート、後半はギターという、

まあブリーム先生の最盛期のコンサートだったと思う。

何がすごかったかって、

ギターで弾いたバッハのリュート組曲第四番ホ長調は、

まさに究極、至高、絶品(ってこればっかりだ)であった。


 原曲はヴァイオリンのためのパルティータであるこの曲は、

プレリュードを除いて比較的ギタリストにも取っ付きやすい曲が多いが、

とっつき易いのと演奏効果が上がるのはまた別物であり、

名演を聞くことは稀有である。



若かりし頃へのリンク 社内報に載ったときの写真あり





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