My life in guitar music



                           
                                 
長井 浩氏






       【第1章 白いギターの巻】=(1)=〜つづき〜



 ところで、私が中学生のころはいわゆるフォークソングというジャンルの音楽の全盛期であったが、

ほとんどのフォーク歌手はフォークギターを弾いていた。

クラシックギターとかフォークギターというのは本来楽器の種類を指す言葉ではないと思うが

(クラシックピアノとジャズピアノという別種の楽器があるわけではない)、

クラシックギターとフォークギターに限っては演奏ジャンルが楽器の種類を指している。

ガットギターもクラシックギターも正確な呼び名でないとすれば、

トーレス型スペインギターとかギブソン○○モデル類似スチール弦ギターとか呼ばなければならなくなり、

それでは煩雑なので、ここではクラシックギターという呼び方に従う。

当時、フォーク歌手の人たちはあまりテレビには出なかったし、

(その反動で最近は吉田さんも南さんもさださんも井上さんもよくテレビに出るようになったが)、

自分の小遣いでレコードを買う余裕もなかったのだが、

それでも彼らの音楽を耳にする機会は多く、

そこで使われているギターの音色は、自分の弾く素材不明の白いギターに比べるととても魅力的に感じた。

たまたま仲の良かったクラスメートの家にも古いクラシックギターがあり、

どういう話の流れからかは忘れたが、ギターを2台使って弾き語りをしようということになった。

彼もフォークギターに興味を持っており、明星とか平凡とかのバックナンバーを所有していたので、

そこで基本的なコードネームと押さえ方、

また、アルペジオとかスリーフィンガーとかベースランニング(野球用語ではない)

といったフォークギターの奏法も共同で研究した。

これはその頃の中高生としては標準的なギターに対するアプローチであったと考えられるが、

クラシックギターでフォークソングの弾き語りをする際にどうしても避けて通れないのが、

ナイロン弦とスチール弦の音質の決定的な相違をいかに克服するかであり、

我々も早々にその問題に直面した。 


 ナイロン弦だからボサノヴァでもやろうかという発想はまったく湧かなかった。

そもそもボサノヴァなんて知らなかったし、

モコモコした音ではなく井上陽水の
LPみたいにシャキっとした音でリズムをきざみたい、

という欲求には抗いがたく、結局もっとも安易でかつ危険な解決策を採った、

そう、クラシックギターにスチール弦を張ったのである。

 
 結果はなかなかのものであった。一応フォークギターの音色になったのである。

その即席フォークギター2台で我々は中学3年生の三学期の卒業直前謝恩会において正式にデビューした。

演奏したのは南こうせつとかぐや姫のヒット曲「22歳のわかれ」であった。

イントロのリードギターと伴奏のスリーフィンガーパターンもきまり、

大した破綻もなく演奏は終了した。

実質数ヶ月の経験のわりには評判もよく、このおいしい思いが、

後々の私とギターとの関係を決定したと言っても過言ではない。

因みにスチール弦を張った例の白いギターはスチール弦の張力に耐えかね、

ほどなくして不治のネック曲がり症を呈しはじめ、

楽器としての短い生涯を終えたことをここに付記しておく。

良い子は決してまねをしないでもらいたい。
   〜続く〜






                             

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